大判例

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大阪地方裁判所 昭和40年(む)466号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕そこで当裁判所が捜査記録を調査検討した結果被告人が右清水に対し同年一月二五日発信した手紙には、昭和三六年一一月四日に昌運堂(清水方)に入社したことを証言してもらいたいこと、その為に拘置所まで面会に来て欲しいことを依頼した後、自分は山口組系福田組におつたことがある、清水様の所へうちの若い衆に行つて貰おうと思つたが、それでは御迷惑でしよう云々の文章を附加している事実が認められるが他方清水はその手紙を読んで被告人の希望を受入れなかつた場合は福田組身内の若い衆から脅迫ないし嫌がらせを受けるであろうことを怖れる気持を持つたこと(同人の検察官調書昭和四〇年一〇月二二日付)も明白である。従つて客観的には被告人が証人に対し面会を強請するかの如き行為をした事実自体は認められる。然しながら被告人は昭和四〇年一月当時検察官に対し右手紙中に述べたと同一内容のアリバイを供述して強盗殺人未遂行為を否認しておりその際自分は新聞広告を見て昌運堂印刷店(清水方)へ出向き採用してもらつたこと従つて新聞広告が何時出されたかにつき調査して欲しい旨合わせて供述していること然しその頃警察ないし検察庁が右事実について調査した様子が伺われないこと、従つて被告人自身が検察官に右アリバイの主張を信用させ調査を促す為には何らかの資料を必要としていたこと当時被告人には本件強盗殺人未遂事件に関しては弁護人が付けられていなかつたこと等の事実もまた存在することが十数通にのぼる検察官調書あるいはそれに添附された被告人の上申書等によつて認められる。とすれば被告人が清水に対し封書を送つて面会を強請したことは防禦活動の欲求が切なる余り筆が走りすぎいたずらに右清水に対し恐怖心を抱かせた嫌いがないではないが、被告人としては強盗殺人未遂という重大兇悪な事件の嫌疑を受け自らの防禦活動として(真面目な気持で)発信した心情も又推測できなくはなく当時弁護人がついておらず被告人に替つて調査してくれる適当な協力者が存在しなかつた事実も合わせ考えると右行為が証人威迫罪に該当する点は別として直ちに右行為を罪証隠滅工作と断定することはできない。(本件では結果的に被告人の右アリバイ主張が否定される証拠が出てきたのであるが、被告人の記憶違いということもあり直ちに罪証隠滅行為と断定することはできないと思われるのである。)もちろん原決定の当時は証人威迫の事実が発覚した直後でもあり、安全を期する意味で応急的に全面的な書類授受の禁止決定をしたことは相当であつたと思われるが右に述べた被告人の防禦活動の機会との均衡を考えると、この状態を将来に亘つていつまでも継続することは妥当でなく他方信書の発受については監獄官吏の検閲の際検察官に検閲せしめる等の方法によつて適宜監視することが可能でありそういう手段によつて罪証隠滅工作と認められる信書を発見した場合にその特定の信書の発信を禁じあるいはこれを差押える決定を求めることが可能である以上書類の授受を今後もなお全面的に禁止することは妥当でない。但し接見については監獄官吏が接見場所に立合つたとしても必ずしも対話内容が罪証隠滅工作になるか判断することは不可能であるし検察官が常時これを監視することは実際問題して不可能であるうえ被告人自身も申立書によれば接見禁止の解除までは必ずしも望んでいないことが窺われるから接見の禁止を取消すべき理由はないと解する。 (石原武夫 森田茂 田中宏)

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